ピッチで起きた現象を深読みするブログ

分析の醍醐味は“解釈が自由”だということ

負ければ敗退 ~ナーゲルスマンの修正力~

勝ち点3のホッフェンハイムと勝ち点2のシャフタール・ドネツク

グループFの生き残りをかけた決死の対戦

シャフタール・ドネツクファンの方には申し訳ないですが、私がホッフェンハイムを応援していたわけかどうしても平等に分析できず、偏った記事になりますがご容赦下さい!!

 

<スタメンとフォーメーション>

 

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この試合はお互いが従来のシステムでのスタートではありませんでした。基本ホッフェンハイムは5バック、シャフタール・ドネツクは4バックのチームですが、全く逆になる構図でした。ホッフェンハイム点を取りに行くための4バックシャフタール・ドネツクは持たれることを許容して、自陣に引き込んでカウンター!という感じでしょうか。

 

ホッフェンハイムのオーガナイズオフェンス>

相手が高い位置からプレスに来ず、ミドルサードまで簡単にボールが運べたのでビルドアップをする必要はありませんでした。ただ、シャフタール・ドネツクの守備が超ハイライン。どうミドルサードから攻略するのかに注目したいと思います。

 

ホッフェンハイムのプレー原則

 

ホッフェンハイムの攻撃ポイント

「あえて分断された攻撃」

 

㉗クラマリッチ⑩デミルバイが早い段階でライン間にポジションを取ります。よって最終ラインで数的同数を作ります。

 

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DFライン+DMでボールを回しながら、前線の選手の動き出しに合わせて裏のスペースへボールを送り込みます。


ただボールを送り込むわけではないんです。前線の5人で相手のラインを崩そうと、裏を狙ってライン間を広げ、そこに㉘サライがボールを受けようとする。そのまた裏を狙う、といった駆け引きが多く見られました。

 

例1

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例2

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シャフタール・ドネツクがハイラインを敷くので当然裏には広大なスペースが。ホッフェンハイムの1点目は、ラインアップと入れ替わって抜け出した㉗クラマリッチが華麗なループシュートで点差を縮めました。

 

しかし、問題点も。

ホッフェンハイムといえば!両サイドバックが攻撃的なところが特徴、強みな訳ですが...

IHがライン間を取る際に、連動して両ウイングの選手がサイドに広がります。そうなるとSBが上がるスペースがなくなってしまう!ホッフェンハイムとしては少しもったいないかなぁ、と思って見ていました。

 

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シャフタール・ドネツクのプレー原則>

 

シャフタール・ドネツクの攻撃ポイント

「タイソン、イスマイリーの存在感ぱねぇ」

タイソンとイスマイリーしかいないんじゃないかな、って思うくらい2人のコンビネーションが良かったですね~。

先制点も2人でこじ開けちゃいましたからね。

 

<先制点解説>

攻撃のスイッチとなったのは⑤ミトビイェンコの縦パスが⑦タイソンに入ったところ。縦パスで⑰㉗⑩⑲で形成されていた敵プレッシャーラインを超え、⑥ノルドフェイトの脇で⑦タイソンがボールを受けた。ダイレクトで右サイドの㉛イスマイリーにさばいて一気に加速。右サイドでのコンビネーションで突破、ゴール。

いつもは5バックなので、㉒フォクトが縦パスに対して大きく出てしまうんですよね。そこで③カデジャベクとポジションが入れ替わってしまっていて、うまく対応できていなかったところを見逃さず、ゴールを決めてしまうので素晴らしかったです!

 

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~ナーゲルスマンが魅せた!修正の的確さ~

 

開始15分で2失点してしまったホッフェンハイム。つかさず、その原因を見抜き、修正策をピッチに伝えた。

まず、その原因とは?

 

ボールの取られ方と予防的カバーリングの配置

 

ホッフェンハイムの攻撃ポイントで早い段階でライン間にポジションを取るIHについて解説したが、よく見てみると自陣側でも5vs5の現象が起きている。さらに中央でのエリアを見ると3vs5と数的不利にもなっている。

 

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そこで気をつけなければならないのが、相手が前向きの状態でボールロストしてしまうこと。セカンドボールを拾われることでさえ危機的状況に陥ることもあり得る。

二点目のシーンも③カデジャベクの裏へのパスが少しショートになり、そのセカンドボールを拾われてからの失点だった。

⑯シュルツのクリアミスもあったのだが、こういう状況になっている事自体問題だといえるだろう。

 

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そこで...

 

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⑩デミルバイがボールを引き出すようなポジションに、代わりに③カデジャベクが高い位置を取るようになりました。1枚ではありますが、中央の人数を増やすことで少しでもカウンター時のリスクを減らしました。

 

③カデジャベクを上げたことで予防的カバーリング面以外での効果も。

 

スプリントにおいてカデジャベクは非常に高いものを持っているので高い位置で使うことで右サイドでの攻撃を牽引。抜け出して速いロークロスでいくつものチャンスを演出。

ここで注目したいのはカデジャベクだけではなく、⑲ベルフォディル。

この人は、なんと言っても「頑張る」

守備にも戻ってくるし、裏にも飛び出すし、競り合い頑張るし、そしてなんといっても仲間を活かすプレーもうまいんですよね。

相手WBの位置にポジションを取ることで身長での質的優位で後ろにフリックしてカデジャベクのクロス、またフリックできなくてボールがそのまま後ろに流れてもカデジャベクにボールが渡る。普段からやっている攻めの形ですね。

 

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この試合、これだけでは終わらないんです。後半59分、サライが連続イエローで退場になります。頭を悩ます、ナーゲルスマンの取った行動とは...!!

 

右サイドはカデジャベクの聖域 左右非対称の攻め

 

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3バックに切り替え、ボランチにデミルバイ。左サイドは基本的には変わらず、右サイドはカデジャベクの聖域と化します。

1人少ないのはホッフェンハイムなのに、まるでシャフタール・ドネツクのほうが1人少ないかのように思えるくらい果敢な攻めが続きました。

右サイドは三人がトライアルグルを作りながらサイド攻略をしてクロス、左サイドはカデジャベクのスピードでぶっちぎっていきます。

 

あとは決めるだけ--------------------...あぁ... ゴールが入らない、入らない。

 

数々の決定機を外し、そしてシャフタール・ドネツクに決勝点を許し、2-3で激闘を制したのは試合巧者ではなかったシャフタール・ドネツク。そして、ホッフェンハイムのグループステージ敗退が決定。

 

 

戦評

試合巧者が必ず勝つとは限らない。サッカーとはそういうものだと思い知らされた試合でした。ナーゲルスマンの試合の中での修正力は、先日のCL第1節シティとの試合でもグアルディオラとの駆け引きで注目されましたが、まだまだ未来のある指揮官として大きな魅力を感じますね。ナーゲルスマンの時代が来る日は遠くないのかもしれません!

 

最後まで読んで頂いてありがとうございました!また、いらして下さい!